2020 June

 

   
 
 
新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言、外出自粛要請とあまりにも特殊な時間を過ごしたこの春、「全ての時間を花束にして」というタイトルが心に響く。童謡「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」の作詞で知られ、1994年に日本人として初めて国際アンデルセン賞を受賞した詩人まどみちお氏の自伝的エッセイ。すべての命の尊さを静かに語る。

 

 

 
 
 
私がパリに渡って最も影響を受けた人とも言えるルル・ド・ラ・ファレーズ。イヴ・サンローランのミューズでありコレクションのジュエリーデザインを担当していたルル。ヴィクトワール広場のアトリエで働いていた頃よく見かけた長身で細身のモデルのようなその姿と自作のジュエリーを纏ったオーラ、そのインパクトは今も忘れない。
私が働いていたアトリエのパトロンとも仲が良く、気さくで大らかなキャラクターに圧倒されつつ大ぶりでゴージャスなジェエリーを見つめた。2011年に63歳という若さで亡くなった後に出版された写真集は今も私の宝物。

 

 

 
 
味噌は大豆製品であり発酵食品、毎日摂りたいヘルシーな調味料。外国育ちの母にとって「味噌汁」のある朝の光景は経験した事の無い憧れだったのだろう、私が子供の頃は見様見真似で作ってくれた不思議なお味噌汁がテーブルに並んだ。「御御御付」とかいてオミオツケと読むお味噌汁、毎日違う具材で作るダイアリーのようなこの本は母のキッチンから受け継いだ大切な一冊。

 

 

 
 
虎屋ギャラリーで「王朝のおもちゃー林美木子の有職彩色ー」展を見る。有職彩色(ゆうそくさいしき)とは宮中の行事や芸術、装束などを研究する学問「有職故事」にのっとって制作され彩色された作品のことを言うそう。宮廷文化の華やかさを伝える檜扇や貝覆(かいおおい)、虎屋所蔵品から林氏がインスピレーションを得て制作した折箱などが春らしいピンクを基調とした会場に並ぶ圧巻の展覧会。

 

 

 
 
会場の入り口には回転台に乗った可愛らしい張り子のお人形がお出迎え。「御殿犬」は奈良の尼寺に伝わる犬の人形を模したもの、「福良雀」は雀が羽毛を膨らませている形に縁起の良い文字を充てたもの、「犬ばこ」は犬の安産と多産にあやかったものとそれぞれに「お守り」のような意味を持つお人形がゆっくりと回る。

 

 

 
 
 
会場の中で圧巻の存在感を放つ「貝覆」は蛤の貝殻に源氏物語や花鳥図が描かれた「歌留多」(かるた)の元になった貝合わせの遊び。かるたの意味も漢字を見て初めて知る。

 

 

 
 
一面に並べられた「伊勢物語歌留多」と「源氏物語板絵」、和歌も林氏の直筆とのことで屏風のように並ぶ一つ一つの作品は正に壮観・・・。虎屋所蔵品として展示されている菓子折は元禄10年(1697)の御用記録「諸方御用之留」による桃の節句用折箱の記録から林氏が文様を選んで制作したものだそう。その細工の素晴らしさはもとより、元禄の記録が残っていることにも驚く。

 

 

 
 
4月の緊急事態宣言以来、外出自粛が続き美術館も殆どが臨時休業だったこの春、久しぶりにワタリウム美術館へ。ミュージアムショップだった向かいの土地はロイス・ワインバーガーによる「ポータブル・ガーデン」という作品のインスタレーションに・・・、なんとも贅沢なプロジェクト。道行く人も思わず足を止める憩いの緑、そのアイディアも素晴らしい。

 

 

   
 
 
   
 
 
 
expo index 美術館で展覧会を見るという事が全くなかったこの3ヶ月、「青木陵子+伊藤存 変化する自由分子のWORKSHOP」展を見る。インスタレーションの先にはメタモルフォーセスと言う名前のショップが出現。宮城県石巻市にある網地村という小さな島で始まったこのプロジェクト、使われなくなった元駄菓子屋の家財道具ををリメイクした商品を売るお店に。マリオ・ボッタの設計によるシンプルで無機質な空間に「有機質」なインスタレーションの組み合わせが面白い。 page top

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